「都会型の地産地消」 – 30㎡の面積で作られるブルックリン産ウィスキー

kings county distillery

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「不足」は創造性の母である。
時間がなければ、短時間でできる方法を考える。予算がないなら、低予算でできる方法を考える、といった具合に、様々な条件が揃わない事を不利と捉えるのではなく、むしろ独創性を発揮する好機として捉える。
そして、制約の中だからこそ生まれるアイディアを形にしていく。

如何なるスタートアップも、はじめから人・モノ・カネ・ノウハウが全て整っているケースはほとんどないからこそ、このようなDIYスピリットにも通ずるメンテリティが制約の中で何かコトを起こそうと志すスタートアップビジネスには不可欠。
(もちろん、これらはとにかく今直面している問題を突破するために視野に入れるべきメンテリティであり、徐々に、より時間を確保していく方法、必要な予算を確保する方法は当然ながら見出していく必要がある事は言うまでもない。)

さて、今回ご紹介するスタートアップビジネスは、「都会型の地産地消」として一つのあり方を提示している、ニューヨーク州ブルックリンのウィリアムズバーグ地区にて僅か30㎡の面積を蒸留酒製造所へと変換させ、ウィスキーの製造販売を行うKings County Distillery。(Distilleryとは蒸留酒製造所の事。)この動きの最も意義深いものの一つとして、2010年4月に生産を始めたこの製造所がかつてアメリカで酒類製造や販売等が法律により禁止されていた1920〜1933年以来、ニューヨーク州におけるはじめてのものであるという事。長い空白期間を経て、伝統と現代が結ばれた歴史的な出来事である。Kings County Distilleryをはじめとして、今後もニューヨーク州において数々の酒類製造者達が生まれるのではないだろうか。

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創設者は、建築事務所で勤めるColin SpoelmanとNew Yorkマガジンの編集者であるDavid Haskellによるデュオ。かつてColinは出身地であるケンタッキーの自宅で密かに製造を行なっていたが、これは残念ながら法律違反となってしまう。そこで、パートナーのDavidと調査を進める中で、誰も法規制範囲内での酒類製造を行なっていない事を知り、ここに大きなチャンスを見出した事がビジネスへと踏み出すきっかけとなった。

現在提供している商品は、樽での熟成期間が極めて短いmoonshineと呼ばれているウィスキーと、所謂樽で熟成させるバーボンの二種類。200mlのミニボトルは一本当たり$20〜$40というハイエンドなポジションを狙っている価格帯。収益的な観点から言えば、樽の中で時間をかけて熟成させるバーボンの場合、スタートアップビジネスにとっては生命線となる日々のキャッシュフローも同じように樽に縛りつけられてしまうため、バーボンの方が人気が出る事を予測しながらも、現段階ではmoonshineの販売に力を入れている。もちろん、味に関しては、自然な甘さと繊細さを合わせ持つとして、地元レストランからの好評価を得ているという。ミニマルなパッケージラベルは、実は歩道に落ちていた古いタイプライターを用いて制作しているというまさにDIYスピリット満載!

地元地域との繋がりを大切にしたいという彼らは、ウィスキーの原料として使用しているとうもろこしも ニューヨーク州北部のFinger Lakesで有機栽培されたものを調達し、商品の販売先はブルックリン近隣を中心としており、その地産地消へのこだわりが垣間見える。往々にして、「地産地消」とは、大規模な製造機器やある程度の敷地面積、水の純度、原料調達先など様々な条件が必要とされる事から、大都会のコンクリートジャングルには合致しないものとして見られがちかもしれない。
しかし、「地産地消」がそれぞれの地域が自ら価値なのであれば、大都会には大都会なりの「地産地消」の形を模索する必要があるのではないだろうか。

ちなみに近年、ニューヨーク州の酒類製造に関する法律の規制緩和により、マイクロ蒸留酒製造所と呼ばれる小規模製造所が少しずつ増えている。
全米トップ40社にランクインするビール醸造所のBrooklyn Breweryの共同創設者の一人が新たに始めたプロジェクトNew York Distilling Companyや、前職が債権トレーダーだったBreuckelen Distilling等、今後も益々増えると予測される。

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photographs via garden&gun

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