経営学とアートギャラリーの狭間 イスタンブールの分野横断的ファシリテーター – Çağlar Kanzik

 

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今日ご紹介するのはトルコ(イスタンブール)に拠点を置く、とある「ファシリテーター」のお話。

2009年にオープンし、今では音楽に飢えた人々のナンバーワン・デスティネーションと化しているMini Müzikholというクラブの運営から、日中はEdisyonという若手アーティストのエキスペリメンタルな表現をサポートするギャラリー経営、そして時には写真家までをこなすÇağlar Kanzik。NYやロンドンと比べればまだまだ音楽・アートシーンが未発達なトルコでは、それらの状況に喉の乾きを覚えている若者が数多く存在する。そんな環境を変えるべく、Çağlarは週7日間働きっぱなしの日々を送る。

元々エンジニアリングや経営学を学んでいたÇağlarは仕組みを考えるのが好きだったようだ。課題を解決するアイディアを出し、それを実行する事に喜びを感じる。周囲からは「何か一つのものに集中すべきだ」と言われたが、それらは純粋に自分のやり方には合わないと判断し、今では様々なプロジェクトを同時並行させている。人は物事を定義する事で、目の前の事象を簡素化し、理解したいと考える。逆に言えば、外から見た時に一つのカテゴリーや言葉に定義できないもの、一見複雑に見えるものからは距離を置きがちである。実際に仕事でも店舗内装はインテリアデザイナーに依頼し、広報関係は広報部に依頼する。しかし、例えば店舗内装に「編集力」という職能を持った雑誌の編集者が関わったり、広報の仕事を「価値を顧客に伝達し納得してもらう」事が職能の一つである営業部門が考える、といったように本来は「提供できる職能」として捉える事でまた違ったアウトプットが可能かもしれない。もちろん、一つの分野をとことん追求しなければ達成し得ない世界というのは確実に存在し、その価値は計り知れない。しかし、多分野に一つの横串をさして新たな価値を創造する立場も同じように尊い。そんな分野横断性に溢れたメンタリティ持ち主がÇağlarである。

Caglar Kanzik

そんなÇağlarは現在の活動拠点であるイスタンブールの前に数年間ニューヨークに在住していた。始めてニューヨークの地を踏んだのは、たまたま違う行き先の飛行機出発時間が6時間遅れた事がきっかけとなった。その時間を利用して友人を訪れようと思って降り立ったニューヨークで、「初めて自分の居場所を見つけたような感覚を覚えた」と話す。そんな、運命的な出会いも、キャッシュが底を付きそう、という生々しい理由により結局イスタンブールへと帰る事となった。

イスタンブールへ帰ると、Çağlarが共にEtraftaというブログを書いていたアート、政治学、グラフィックデザインといった多様なバックグラウンドを持った仲間達と現地のカルチャーセンターを作るプロジェクトを実現しようとしていた。ワークショップ、スタジオ、ギャラリー、フードコート等が集まった場所を計画していたが、結果的に資金繰りがうまくいかなかったため、お蔵入となった。その後、GodetとSoap-Systemの創業者であるMinasという人物が新たな場所を見つけ、ここを近所のバーとしてオープンさせてのがきっかけとなり、クラブビジネスを始めた。

その後、幼少期からアートやギャラリースペースに興味を抱いていたÇağlarはEdisyonというギャラリースペースを立ち上げた。ギャラリーや美術館、そして図書館にも共通する独特の静けさやその空気感に魅了されていたのである。Çağlarは立ち上げに際して様々なアート団体やアート関係者との関係構築を図るために奔走していたが、気づけばポーランド画家のBora Akıncıtürkの代理人を務めるようになっていたそうだ。常に好奇心旺盛に心と意識をオープンにさせていた結果、ローカルアートシーンとの繋がりが持てたのだと、振り返っている。

しかし、そんなÇağlarであるが、頭で描いていたアートギャラリーはむしろアートシーンの「外」で機能するものを考えていた。

ここに、彼のファシリテーターたる所以の一つが垣間見える。分野横断性を意識するÇağlarは単に「業界人」や「業界のための」といった概念を取り除きたかった。これは言うはやすし行うは、の世界である。構想の初期段階においては一平方メートルの箱にホイールをつけた可動式のミニギャラリーを作ろうと考えていたが、結局そのプランは実現させることなく、現在のEdisyonのような若手アーティストが一般に対して作品を展示できるプリントギャラリーとなった。

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ここで展示されているアーティストのほとんどが無名であり、また初期設定価格も全て均一させることでギャラリー内のヒエラルキーを排除する形式をとっている。アーティストもギャラリー運営者も互いにwin-winの関係を目指した形なのだそう。特にまだまだ文化的側面におけるインフラが整っていないトルコにおいてこれらの発信場所というものは若手にとっては貴重な存在である。イスタンブールの現状についてÇağlarはこのように話している。

「イスタンブールでは、街における柔軟性や流動性に欠けます。あらゆるシーンがとても密集しており、他の地区に移動するといった事はありません。例えばニューヨークやロンドンに訪れる度に、アーティスト達が市内において活動地域を変えている事が感じられます。ニューヨークであれば、Bushwick、Red Hook、Gowanus、ロンドンであればDalstonやHackneyといった具合です。そこには多文化的な要素があり、アーティストとしても何らかの居場所を探す事ができます。しかし、イスタンブールでは、文化的とインフラ的な要因が流動性に対する制約として働きます。ここでいう文化的制約とはほとんどが宗教に関連した事であり、人々と何らかの合意に達するためには多くの犠牲や理解が求められるのです。」

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そんなÇağlarにとって、イスタンブールで最も好きな要素もまた「人」なのだそう。イスタンブールには長い歴史と多様な人々が存在し、異なるバックグラウンドを持つ人との出会いが多いとの事。そのため、とても非合理的な事象にも多く出くわすようだ。
「どのようにし考え、反応すればいいのかわからない事が毎日のように起きます。それらは時に悲しく嫌悪感を覚える一方で、時に最高に楽しく驚きに満ちているのです。バイタリティを意味するこの環境からはとてもポジティブなインプットをもらっています。」

そんなイスタンブールも近年は外国人も増え、郊外地域の都市開発等が進んでいるため、交通インフラ等の整備が急ピッチで行われているとの事。
現状の環境を武器に新たな価値創造をしてきたのがまさしく文化の文化たる所以の一つだった事を考えると、Çağlarの活動もその一端を担っているように感じる。現代社会があらゆる分野において「包括的」な解決策や価値が求められている今の気運と、地域性という文化発展において欠かせない要素によって今後何が生まれるのか、継続のみが知る所ではないだろうか。

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http://www.edisyonlar.com/

 

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