この度、2011年7月15日に第一号を発売したKinfolk Issue One。限定プレスだったために、早速完売との事だが、オンラインでも閲読できますのでそちらへどうぞ。
Kinfolkは「日常」に対し深い愛情と敬意を持ち、それらにきめ細やかな感受性の受け皿を随所に配しながら、日常が持つ繊細且つ大胆な性格が放つ美しさを見出している。そして、静寂の中に、芯のある美学の形をビジュアルとテキストを用いながら一つの佇まいとして仕立て上げている。特に、無言の内に雄弁に語りかけてくる写真や映像のビジュアルイメージは圧巻。
また、内容や世界観が素晴らしい事はもちろんなのだが、何よりもこれらを生んでいるクルーの「感度の一体感」が凄まじい。このプロジェクトでは、主にアメリカとヨーロッパを拠点にしている写真家、ライター、映像作家、デザイナー等のメンバーが40人以上関わっているのだが、それぞれが惹かれる世界観や価値観の一致ぶりに全くの隙がない。
編集メンバーの中には、夫婦揃って関わっている人達もいるのだが、夫婦間において共有した価値観を深く分かち合う事の喜びと尊さもしっかりと伝わり、とても心温まる。(これはKinfolkウェブサイト上で、クルーメンバーがそれぞれ保有しているポートフォリオやブログから垣間見る事ができるのでこちらもオススメ)
スピード感溢れる現世において時間とはうまく活用するものであり、時に追われる存在なのに対して、Kinfolkが描く空間では、まるで時間と添い寝しているような無理の無い、「自然な」距離感で付き合っている事がうかがえる。これを単なるスピード感が早い、遅いといった対比や異なるライフスタイルの対比から生まれるある種のアンチテーゼや原点回帰的な捉え方ではなく、「何を大切にしたいか」という答えの裏側に潜む「選択の純度」を汲み取りたい。そして今一度、自身の「生き方」について再考するきっかけとして捉えたい。
日常を大切にする選択を行う事で、あるいは好きなものをその純度を保ちながら生きてきた事で、一つの方向へと導かれ、それが形となり、それが強度なメッセージとなっている。自身の奥底に流れる源流から抽出された「大切にしたい価値観」が持つ強さがまさしくKinfolkではないだろうか。
これは簡単な事ではない。
あくまで個人的な感想だが、悲しい事に、年をとれば取るほどまっすぐに「これが好き」と人目も気にせずに言い放つ人が少なくなるように感じる。共感してくれる人には言えるが、共感してくれなさそうな人達に対しては言いにくくなってしまう部分があるのかもしれない。相手を傷つけまい、という配慮の表れでもあるかと思うが、一方で、相手が知らない世界、現時点では共感できない価値観を自分が保有していた場合、それが本当にポジティブなもの、尊いものであればやはり共有を試みる事が、むしろ相手を傷つけない事にも繋がるかもしれない。
いずれにしても、それが何であれ「大切にしたい生き方」を丁寧に摘みあげ、それを体現していく事の豊かさを社会構成員の一人一人が実感できる世の中はとても尊い世界ではないだろうか。
Kinfolk Website
http://www.kinfolkmag.com/