未来の社会プロトタイプを量産するアムステルダムの詩人+発明家 – Lorenzo de Rita

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かつてはWieden + KennedyでNike, Adidas, Diesel, Volvo等の有名企業を相手に広告ビジネスに携わっていた異色経歴の詩人+発明家、Lorenzo de Ritaをご紹介したい。20年間携わった広告業界を離れ、「コミュニケーションにおけるプロトタイプ」と称する様々な思考実験場として、The Soon Instituteを立ち上げたLorenzo de Rita。その思考実験内容は、「インターネットを物理的な空間にする実験」、「時間の質を示す時計の開発」、「一平方メートルしかない美術館」と、多岐に渡るが、まずはその経歴から少し触れてみたい。

ローマとミラノにて広告関連の仕事をしていたLorenzo de Ritaはある日、Wieden+Kennedyからアムステルダム事務所にてNikeの広告を担当して欲しいという依頼が舞い込んだ。そのとき、自分はやりたくなかったが、他の誰もが引き受けなかったので、仕方なく引き受けたという。その後、職を移り、今度はアムステルダムに拠点を置く広告代理店の180にて、Adidasのグローバルクリエイティブ・ディレクターとして歩み始めた。しかし、そのときのLorenzo de Ritaはより一層、広告業界が持つ「監獄」のような性質に閉塞感を感じていたという。その心理をLorenzo de Ritaはこのように話す。「どんなに自分がやっている事が詩的であったり、人と違う要素があったとしても、それらは自分が求める詩的レベルではなかったのです。」

そんなLorenzoは仕事が辞めたくても、やはり子供が四人もいた状況では考えざるを得ない状況だった。そんな時、イタリアのパスタメーカーのBarillaからオファーが舞い込んだ。その時のBarillaは、オファーを断られないよう、莫大な報酬を条件として提示したが、Lorenzoはそれを断った。さすがに驚いたBarillaの上層部達は何故今回の話を断るのか、その理由を確かめるために部下を送り込んだ。

そこで、Lorenzoは自分のThe Soon Institute構想の話を提示し、結果的になんと最初のプロトタイプ20個分に対してBarillaは資金を出したという。

さて、ここらで気になる事を少し解き明かしていきたい。「そもそもThe Soon Instituteとは何だろうか?」という事を。

この質問をぶつけられた本人はこう答えている。「そうですね。。実はこの機関を”何なのか”という事と結びつける事にとても葛藤があります。定義とは、物事を完成され、閉ざされたものへと縛りつけるリスクがあります。しかし、その名前から、この機関は既に未完であり、不明確であり、予測不可能である事が推測できます。強いて言うならば、それは一つの視点であり、物事を違う角度から捉えるという事です。物事が既に保有する性質そのものではなく、それらがどのような可能性を秘めているのか、又はどのようであるべきかを捉える視点です。私達は、可能性を探る過程で出会った興味深い物事を来るべき社会モデルとしてのプロトタイプへと昇華させます。」

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これらの「プロトタイプ」と呼ばれるものは、もちろん具現化される。その一例がjointhepipe.orgだ。このプロトタイプの目的は、世界の水不足に悩む人達を救う事である。そこで、Lorenzo達は互いに結合できる水道管に似せたウォーターボトルをデザインした。再利用プラスチックにより作られたこのボトルは、プロジェクト参加者全員に渡され、これらの収益は全て発展途上国における井戸開発に利用される。より多くの人々がこのプロジェクトに参加する事で、「水道管」が長くなり、水不足に悩む人々を減らす事だ。

これら以外にも、冒頭で挙げた「インターネットを物理的な空間にする実験」や「ラグビー戦術から学ぶ新たな社会政策」、「風の要素をウェブサイトに適用する方法」等のプロトタイプが存在する。
ちなみに現在のプロトタイプ数は約57に及ぶという。実に深淵なトピックを57、と考えると実に意欲的でエキサイティングな取り組みである。

このリストを見てもお分かりの通り、これらは必ずしも人々が使えたり、消費できたりする類のものでは無い。そこにこそ、Lorenzoの意図が潜む。「欲求というものは信じる力を奪います。信じる、という行為は皮肉という価値に置き換えられてしまいました。しかし、信じる力がなければ発展が得られない事を考えれば、これは大きな問題です。私のThe Soon Instituteでは、人々の”信じる力”を取り戻すためのツールを提供しているのです。」

Lorenzoの活動を見ていると、詩人としての役回りが何よりも興味深い。20世紀に生きた詩人達の多くも確かに生きる上での視点を表現し、その着想によって世界の奥行や幅を社会に与えてくれた。そんな中、21世紀に生きるLorenzoはその詩人が果たす責務や役割の意味合いを大きく塗り替えている。もし、視点こそが詩人の詩人たる秀逸さであるならば、その視点を持ってもっともっと社会のために能動的に働きかける事はできる。「広告業界は極めて保守的だ」、と話すLorenzoの発言にも表れている通り、Lorenzoはむしろユーザーや社会に挑みかける姿勢を決して崩さず、人々の脳と心に揺さぶりをかけてくる。その行為は、想像力の幅こそが人類の可能性の幅である事を改めて示唆してくれている。

そんなLorenzoの興味深い一言を最後にお届けしたい。

“貴方が思い描く社会やプロジェクトが具現化しないことを失敗と捉えますか?”という質問に対するLorenzoの答え。
「いいえ。私はエンジニアとして勝つならば、詩人として負ける方がましです。」

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The Soon Institute Website
http://www.thesooninstitute.com/

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