木々との対話を繰り返すニューヨークの木工職人 – Joshua Vogel

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Future Ownership Japanは決して懐古主義ではないが、手仕事は私達の「世の中への敬意100選」に文句なしでランクインするものの一つである。「手」というものは人類が誇る高機能な触媒であり、思考の具現者であり、最良の学び手の一つである。

そこで今回ご紹介する手仕事の担い手は、ニューヨークを拠点とする41歳の木工職人・デザイナーであり、Black Creek Mercantile & Trading Co.という自身の会社の共同創業者でもあるJoshua Vogel。事業内容は主に唯一無二の彫刻作品や木工プロダクト・家具のデザイン及び製造を担っている。商品の材料として生き物である木材を利用しているため、Black Creek Mercantile & Trading Co.では資源を最大限活かし、ゴミを最小にする取り組みを行うと共に、商品の均一性を図る事によって環境負荷を高めるのではなく、その時に仕入可能な木材や状態によって商品の角度や材質が異なる姿勢を貫く事で無理の無い生産を行なっている。材料が自然物であるため、出来上がる商品にも自然な仕上がりを求めるという、「自然」と寄り添う哲学を保有している。

そんなJoshua VogelはNew Mexico State大学時代に人類学と美術史を学び、University of Oregonにて建築を学んだJoshua Vogelはこの当時からより真剣に木材と向き合い始めたという。(実際にJoshuaは5歳位から木と戯れているような少年だったそうだ。)
木材を扱う仕事の関係上、Joshuaは仕事の拠点を森へと移し、森と共存する事を選んだ。同じように木材を必要とする他事業者との関係性を構築すると共に、自分達が望む仕事のあり方・進め方を実現し、住みたい環境に身を置く事を重視した結果である。また、森と共存する事で自分自身大きなエネルギーを受信できると共に、対外的にも自分達がどのようなプロダクトを作りたいか、どのような思想背景を持っているか、というイメージやビジョンが共有しやすいのだという。木の事は木に囲まれた環境で考えよう、という真っ直ぐな姿勢とメッセージが伺える。働き方と生き方がまさしく一致している好例ではないだろうか。

このような選択をする背景はJoshuaのこのような言葉からも理解できる。「私は強い文化的そして歴史的個性のある街が大好きです。地理的・環境的要素がどのようにしてユニークなコミュニティ形成に反映されているのかという事にとても関心があります。また、それらの要素を一つの限界としてではなく、一つの性格・特質として包括できる街はとても素晴らしいと思います。ベネチアはその代表的な例ではないでしょうか。」

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そんな歴史的価値に敬意を払うJoshuaが抱える近年の問題意識として、「一般的な進化の尺度」に対する疑問があるようである。

Joshua曰く、「一人の作り手として、新しい事は必ずしも良い事ではないと言えます。そして建築の学び手として、私は”再利用の適用”に関する強い提案者でもあります。実際的な意味合いで、私達は発展、そして短期的な経済成長という名の元に地域史を取り壊す事に対して細心の注意を払う必要があると考えています。」

そもそもJoshuaの歴史に対する考え方は木工職人として木々に触れる日々を送る中で強固になっていった価値観かもしれない。Joshuaは次のように語っています。

「木や木材には私達の人生のように時間的な側面があります。その時間性に強い関心があるからこそ、私は物語が大好きです。何故ならば、物語とは常に時空間を遡るものだからです。そして木々が持つ物語も同じように時空間を遡る事で得る事ができます。木を削る時、私は木の人生の中に入り込み、そしてその歴史に入り込んでいるのです。」

「木は偉大なる先生です。私は木工職人と名乗っていますが、それはあくまでもデザイナーや作り手としてはほんの小さな側面に過ぎません。木は自分達の行動に対する反応を示し、それらは例えば石等に比べれば理解し易いものではないでしょうか。木は人生に対するアプローチが私達人間よりもストイックです。木を人格化させるのではなく、木のどの部分に私達人間を見出すか、という視点により多くを学べるのではないでしょうか。”生きる”という原理を愚直に実行する事。それは木から教わる大きな教訓ではないでしょうか。」

今日、日本においても手仕事への関心度や敬意の高まりを少しずつ感じるが、これは日本に限った事ではない。アメリカでも手仕事への敬意が散見される。その背景には、時代の不透明さ故に目の前の確かなものを希求する精神、豊かさの再考・再定義の加速化、身体性と働く事の融合を始め人によって多様な答えがあるかとは思うが、いずれしても「生きる事」と「働く事」に矛盾が無い事、これが最も尊い価値観であり、意識的にも無意識的にもこの価値観の目覚めが広がる事が大切ではないだろうか。このテーマに関してはまた別の機会に考えてみたいと思う。

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Photography courtesy of Garden Design

Black Creek Mercantile & Trading Co.
http://www.blackcreekmt.com/index.html

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