アメリカが生んだ文豪のマーク・トウェインはこんな言葉を残している。
「今から20年後、あなたはやった事よりもやらなかった事に対して失望する。安全な港から縄を捨て、帆を張り、貿易風を受け止めよ。冒険し、夢を見て、発見しよう。」
もちろん人によって冒険の意味は違えど、今回ご紹介するオーストリア出身の映像作家・写真家のKlara Hardenにとってのそれは、25日間アイスランドを一人で渡り歩き、その旅路をドキュメンタリーという形で残す事だった。
文字通りの「冒険」というイメージにふさわしいその旅路は25日間の孤独であり、25日間の自己開発を意味していた。
ここでやはり気になる事が、何が原動力の引き金となっているのか、何が彼女を動かすのか、という部分であるがその背景にはこのような考えがある。以下、引用文である。
「子供の頃、人は最もエキサイティングな夢と計画を抱きますが、それらはやがて「できる」「できない」といった波に流され、「すべき」「すべきでない」という凍てるような突風によって流されてしまいます。そしてある日、自分自身が他人の人生を生きている事に気がつくのです。私はここ数年間でこのように人生に不満足な友人や家族をたくさん見てきました。皆口を揃えて「それが人生だよ」と言います。しかし、私は他にもより幸せで健康的な人生を送るための可能性がある事を信じています。自分が本当にやりたい事から遠ざけようとする「恐怖」に対して私は全力で立ち向かっていきます。何が起こるかは分かりませんし、全てを計画する事はできないので恐怖はあります。しかし、それでもこの旅にでなければならない本能的な呼びかけがあるのです。この旅を想像するだけで高揚感に満ち溢れるのです。」
そう、全ては自身の心と体をもってして、人生にあきらめがちな友人のために「可能性」という言葉の意味を証明する事。そして、人生におけるあらゆる可能性に目と心を配る事で、人は変わる事ができるのだというメッセージを送るためにKlara Hardenは過酷な旅に出る。「自分ができるのだから、あなたもできる。」そんなシンプル且つ重いメッセージは、経験者だからこそ伝えられる勇気と優しさである。
こんな想いを携えて出来上がったドキュメンタリー映像が「Made in Iceland」である。
この旅を終えて、Klara Hardenはこんなコメントを残している。
「私が経験した事はあまりにも稀有な出来事であり、現実とは呼べないものでした。私は冒険と孤独を求めアイスランドへ行きました。決して何らかの世界記録を破ったわけではありません。しかし、私自身にとってのあらゆる記録と限界を打ち破る経験がそこにはありました。私自身の人生の中では最も長く、過酷で、冒険性に満ちたものでした。そして私にとってそれは最高でした。この旅以上に疲弊し、幸福感を感じ、自分自身の考えに飽き、孤独を感じ、空腹感に襲われ、生きている感覚に満ちた経験はありませんでした。」
心の風景が現実の風景に投影されるのであれば、心の風景から変えなければ目の前の風景は変わる事はない。
そんな大切な事を身をもって証明してくれたKlara Hardenの活動に敬意を表したい。
Photographs via flickr
http://www.flickr.com/photos/allesklara/page1/