造形は自然が既に教えてくれている – ニュージーランド陶芸家Len Castle

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いつの時代も私達人間は自然に教えられてばかりである。自然界の理解や洞察が私達人間社会の発展に大きく寄与し、叡智や創造性の源泉となってきた。
今日ご紹介するニュージーランド陶芸家のLen Castleもニュージーランドの海岸線、火山地や地熱地帯等を自身の作品に持ち込む刺激材として活かしてきた一人である。クリエティブアーツの世界、そして陶芸における功績が認められ大英帝国勲章も受賞しているLen Castleは、ニュージーランドが持つ自然や物語に強く魅了されており、”これらの風景こそが自然が創造したアートギャラリーである”と語っている。そんなLen Castleは残念な事に、昨年86歳にしてその生涯に幕を閉じてしまったが、彼が作品に込めた情熱や純粋な知的好奇心は今日を生きる私達にも大きなインスピレーションと力を与え続けてくれる。

元々Lenはニュージーランドのオークランド大学で理学士を取得し、Auckland College of Educationにて教え手を育成する立場として働いていた。作陶を始めるのは1947年(当時23歳)に入ってからの事であり、その全ては独学によるものだった。試行錯誤を繰り返しながらその道を歩む中で、LenはAssociation of New Zealand Art Societiesに認められた初めての陶芸家となり、その結果、1956-57年の間にはイギリスへと渡り、日本の手仕事を背負ってきた柳宗悦や濱田庄司とも親交があったイギリス人陶芸家バーナード・リーチと仕事を共にする機会を得たのである。Len Castle自身も今までの人生において濱田庄司の影響力は大きかったと語っている。この時の出会いや経験をきっかけに、1963年には教え手としての自分を捨て、自分の持てる全ての時間を作り手として注ぐようになる。

Len Castle

教え手としての一面を持つLen Castleだけあり、その飽くなき知的好奇心や探究心は強く、1966-67年の間は日本で陶芸に対する洞察と学び、そして愛情を深めていきながら、その後は韓国や中国へと渡り様々な陶芸家との交流を図った。
Lenは、自身が持つ科学領域のバックグラウンドと自然界への知的好奇心を結びつけながら、それらを陶芸へと集約させる事に情熱を燃やした。この姿勢・態度こそが彼の創造性の道を拓く主要素となり、作品を通じてもそれらが色濃く反映されている事が見て取れる。また、その思想が垣間見える発言として彼はこんな言葉を残している。

“私にとって最良の作品とは、直感と意識的な選択が見事に調和した瞬間に出来上がるのです。”

自然界そのものがあらゆる要素の調和から成り立っている事を考えると、この発言もまた自然への洞察より得られた境地なのかもしれない。現代の社会ではあらゆるもののバランスが崩れているように思う。例えば、ビジネスの世界においては、数多ある情報の中から頭一つ飛び抜けようと価格ポジションでいえば高価格か低価格路線かを明確に示そうとし、その極端な方向性を生み出す事がポジショニングであるような認識を感じる。逆に言えば、どちらとも言えないものを「中途半端=戦略性の無さ」と称し、ネガティブに捉えられる。しかし、自然界が見事な融和から成立し、そこに大きな心地よさを感じるように、「中途半端」と見られがちなものは、「調和」とみるべきではないだろうか。過不足なく、バランス良く調和している姿に私達人間は意識的にも無意識的にも心地よさを感じる生き物ではないだろうか。

いずれにしても、Lenは自身が身を置くニュージーランドの自然を大きな情報源とし自然が持つそのままの強さを受容しながら、自らの手へと伝播させていく。日本の陶芸家とはまた作風が異なる部分を見ると、やはり身の回りにあるものを素直に取り入れながら創造する事の尊さを感じる。音楽や料理でも見られるが、地域性という要素が絡む事によって、唯一無二のものが誕生する事は往々にしてある。

そんな62年の陶芸歴を持つ彼が残してたこの言葉を最後の締めとしたい。”私は現在ピーク時にいます。昔は頭にあるイメージを形にする事はできなかったが、最近はその頻度が高まっています。”
簡単に聞き取ればそれまでだが、頭のイメージを形にしようと人生を賭けていながら、中々その境地に立てずにもがき苦しむのが世の作り手の心情だと考えると、この言葉はそう簡単に言えるものでは無い。

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(Photos via The Arts Foundation)

The Arts Foundation Website
http://www.thearts.co.nz

2 total comments on this postSubmit yours
  1. そういうことなんだよね。
    この世は驚きに満ち溢れていて、この感覚は、多くの場合、自然の造形の美しさに気づける感度を養うかどうか、だと思います。

    私たちが、一体何を表現物として、この感動を伝えていくかは、人それぞれの自由だけど、やっぱり陶芸はいいね、と改めてその認識を強化させてくれました。ありがとう。

    あと詩もね。

    • コメントありがとう!まさしく受容力こそが表現の源泉。そこが向上していかなければ表現は創造性を帯びない。毎日を変化ある日々として捉えられるかどうか、自分も磨いていきたいところです。
      頑張ろう!

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